リフォームの現場に携わるプロとして、お客様から「一部屋だけのリフォームだと、他の部屋とのバランスが崩れてしまいませんか」という懸念を伺うことがよくあります。結論から申し上げれば、その懸念はデザインの工夫次第で解消できるだけでなく、あえて「他の部屋とは違う世界観」を作ることで、リフォームの満足度を高めることも可能です。一部屋だけのリフォームにおいて成功の鍵となるのは、既存の空間との「境界線」の処理です。例えば、廊下からドアを開けてその部屋に入った瞬間の視覚的な変化を、違和感ではなく「期待感」や「気分の切り替え」として演出するのです。そのためには、ドアの色や素材は既存の廊下側に合わせつつ、一歩中に入ったときの内側のデザインを大胆に変えるという手法が有効です。また、色使いのテクニックとしては、既存の家で使われている木目の色調やベースカラーを一箇所だけ引き継ぎ、それ以外の要素で新しい個性を表現すると、家全体としての統一感を損なわずに済みます。費用の面で見れば、一部屋だけの工事はスケールメリットが働きにくいため、㎡単価はどうしても割高になる傾向がありますが、そこを逆手に取って、職人の手仕事を要する細かな造作や、希少性のある建材を一点豪華主義で投入することをお勧めしています。これにより、一部屋としての完成度が飛躍的に高まり、工事を行わなかった他の部屋とのコントラストが「古さと新しさの共生」という美しい物語に変わります。また、小規模な工事だからこそ、担当者との意思疎通が密になりやすく、細部までこだわり抜いたプランニングが可能になります。小見出しのない一本のコラムのように、流れるような空間の繋がりを意識しつつも、その一部屋にだけは特別な光や風が流れるような工夫を施す。プロとしての私の役割は、その一部屋を単なる工事の対象とするのではなく、住まい全体を活性化させるための「心臓」のような場所に作り替えることだと考えています。一部屋だけのリフォームは、住まい手の個性を最も凝縮して表現できる、非常にクリエイティブな挑戦なのです。
プロが明かす一部屋だけのリフォームを成功させるためのデザインの調和