床や壁、天井といった広い面積を占める内装のリフォームを検討する際、多くの人は古いものを全て剥がして、下地から新しく作り直すことを当然のように想像します。しかし、リフォームを安くする方法として、リフォームのプロが密かに、かつ強力に推奨するのが、既存の建材を壊さずに再利用したり、その上から新しい素材を被せたりする「カバー工法」や「重ね貼り工法」です。例えば、フローリングの張り替えを検討している場合、古い床を全て剥がすとなると、専門の職人による解体費用が発生し、さらに大量に出る廃材の運搬・処分費用が数万円単位で加算されます。ここで重ね貼り工法を選択すれば、既存のしっかりとした床の上に厚さわずか数ミリの新しい高機能な床材を貼るだけで済むため、工程が半分になり、費用を三割から五割近く抑えることが可能になります。工期も短縮されるため、住みながらのリフォームでも生活への負担が最小限で済みます。同様の考え方は、壁や建具、キッチンのリフォームにも応用できます。システムキッチンそのものを全て交換すると、解体・給排水工事・本体代金を含めて百万円単位の費用がかかりますが、機能に問題がないのであれば、扉の面材だけを交換したり、あるいは耐久性の高いカッティングシートを貼って取っ手をおしゃれなものに変えるだけで、見た目は新品同様のキッチンに生まれ変わります。これを「キッチンリフレッシュ」と呼び、非常にコストパフォーマンスの高い方法として注目されています。また、浴室であれば、冷たくて古いタイルの上から直接貼れる専用のパネル工法を採用することで、解体による激しい騒音や粉塵を抑えつつ、清潔で掃除のしやすいバスルームを安価に手に入れることができます。こうした手法を採用する際の重要なポイントは、表面で隠してしまう前に、見えない内部の下地が腐っていないか、カビが発生していないかを正確に診断することです。表面だけを綺麗にしても、土台が劣化していれば数年でやり直しになってしまいます。そのため、まずは経験豊富な専門家に点検してもらい、カバー工法が適応できる状態かどうかを科学的に判断してもらうことが不可欠です。古いものを全て捨てて作り直すというスクラップ・アンド・ビルドの考え方から、活かせる部分は賢く活かすという「再生」の視点を持つことが、現代のリフォームにおいて最も賢くコストを削減するための高等技術と言えるでしょう。
既存の床や壁を活かす重ね貼り工法で工事代金を削減する