かつてキッチンは、単に食事の準備をするための閉鎖的な作業場でした。しかし現代において、キッチンはリビングやダイニングと並ぶ、家族が集い、コミュニケーションが生まれる家の中心的な空間へとその役割を大きく変えています。だからこそ、キッチンのリフォームデザインは、調理のしやすさという機能性はもちろんのこと、そこに立つことが楽しくなるような美しさや心地よさを追求することが重要になります。キッチンデザインの根幹をなすのが、作業効率を左右するレイアウト計画です。シンク、コンロ、冷蔵庫の三点を結ぶ動線「ワークトライアングル」を意識することが基本となります。壁に沿って機器を配置する「I型」、コーナーを活かした「L型」、リビングとの一体感が得やすい「対面式」、そして複数人での作業に適した「アイランド型」など、様々なレイアウトがあります。キッチンの広さや、普段どのように料理をするか、家族との関わり方を考慮して、最適な形を選ぶことが大切です。デザインの印象を大きく決定づけるのが、素材の選び方です。汚れに強く、手入れがしやすいステンレスや人工大理石のワークトップ、温かみのある木製や、スタイリッシュな鏡面仕上げの扉材など、選択肢は多岐にわたります。床材も、耐水性や防汚性に優れたクッションフロアやフロアタイルのほか、リビングとの連続性を重視してフローリングを選ぶケースも増えています。それぞれの素材が持つ機能性とデザイン性を理解し、全体のインテリアとの調和を考えて組み合わせることで、統一感のある美しいキッチンが生まれます。また、使いやすく美しいキッチンを実現するためには、収納計画が欠かせません。調理器具や食器、食材など、キッチンには多くの物が必要です。これらを全て扉の中に隠してしまうと、かえって使い勝手が悪くなることもあります。よく使う調理器具は壁にかけて「見せる収納」にしたり、お気に入りの食器はオープンシェルフに飾ったりと、「見せる収納」と「隠す収納」をバランス良く組み合わせることで、機能的でありながら、住む人の個性が感じられるリズミカルな空間が生まれます。機能性と美しさが融合したキッチンは、日々の料理の時間を義務から楽しみへと変え、家族の食卓をより豊かなものにしてくれるはずです。
毎日がもっと楽しくなるキッチンデザイン